【書籍】「東日本の山岳信仰と講集団」

富士塚の資料に当たっていると「講」の存在に気づきます。
本書は東日本を中心とした山岳信仰の地域的展開を、榛名講・戸隠講・秋葉講・木曽御嶽講などの講集団を通して考察しています。

基本情報

書名　　　東日本の山岳信仰と講集団 －山岳信仰と地域社会：続－
著者名　　西海 賢二
出版社　　岩田書院　→出版社の紹介ページ
出版年　　2011/06/01
ページ数　233ページ

概要

日本では古くから、山を神が宿る聖地（霊山）と考え、山自体を崇拝する信仰が発達しました。
山は水源や天候と関わるため、五穀豊穣・雨乞い・災難除けなどが主な祈願内容です。
「講（こう）」とは、信仰を共有する人々がつくる地域の信仰仲間（信者組織）です。
富士講で見て取れるように山岳信仰と講は深くかかわってきました。

本書では東日本での山岳信仰の広まりについて、銘文や碑から詳細に調べられた民俗学的書物になります。

気になったポイント

個人的に気になったのは榛名講と秋葉講です。

荒川のそばに彩湖・道満グリーンパークがありますが、その近くに榛名山松本講の碑が残されています。
以前はよく聞く浅間講、御嶽講、大山講などしか知らなかったので、榛名講などまだ知らないものがあることを知りました。
確かに荒川の土手から冬の時期には榛名山も見えるので、信仰の対象になったことは容易に想像できます。

旧筑波町北条は伝統的な町並みが残る旧宿場町で、町人や商人も多かったため、火災への警戒意識が強かったようです。
町屋や木造建築が密集していたことから、火災の被害を防ぐ秋葉信仰が盛んに行われたと考えられます。
「今年（2011年）で結講235年を迎える秋葉講が、今もなお継続されている。」と記載があるのも興味深いところです。

講について

調べたところ、いろいろな講があることを知りました。
以下は、書籍に登場している講についてまとめました。

1. 榛名講

• 対象山：榛名山（群馬県）
• 主神・信仰対象：榛名神社（火の神・水の神）
• 目的：雹（ひょう）や嵐から作物を守る五穀豊穣の祈願。
• 特徴：農村部で特に広がった。代参講員を派遣し、札を持ち帰る形式。

2. 戸隠講

• 対象山：戸隠山（長野県）
• 主神：天手力雄命（あめのたぢからおのみこと）など
• 目的：開運・厄除け・修験登拝
• 特徴：修験道とのつながりが強く、山岳信仰と神道の融合。

3. 秋葉講

• 対象山：秋葉山（静岡県）
• 主神：秋葉三尺坊大権現（火の神）
• 目的：**火防（ひよけ）**祈願
• 特徴：職人・町人に多く信仰され、江戸時代には全国に広がる。屋根札で今も見られる。

4. 木曽御嶽講

• 対象山：御嶽山（長野県・岐阜県）
• 主神：御嶽大権現
• 目的：霊的加護、病気治癒、登拝修行
• 特徴：白装束・金剛杖の霊山登拝。普寛行者により広まり、今も信仰登山が行われる。

5. 羽黒修験道

• 対象山：出羽三山（羽黒山・月山・湯殿山）
• 主神：月山神・湯殿山神など（死と再生の神々）
• 目的：来世成仏、蘇りの信仰
• 特徴：厳しい修行、死の象徴である湯殿山と新生の羽黒山という巡礼体系。

6. 飯豊山信仰

• 対象山：飯豊山（新潟・山形・福島）
• 主神：飯豊大権現
• 目的：五穀豊穣・水の神信仰
• 特徴：修験道との関わりが深く、地元では信仰登山が続いている。

こんな人におすすめ

• 山岳信仰、講集団の詳細について興味のある方

まとめ

本書は東日本地域の山岳信仰や講集団の活動ついて、碑や古文書から詳しく調べたものです。

その内容は詳細で気軽に読めるものではありません。

しかしかつてあった活動の仔細を知りたい方には参考になる書籍だと思います。

参考資料

古めのためすでに入手しづらい状況ですが、一連の山岳信仰に関する書籍があります。

武州御嶽山信仰: 山岳信仰と地域社会:上

富士・大山信仰: 山岳信仰と地域社会:下

東日本の山岳信仰と講集団 －山岳信仰と地域社会：続－

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すかいす

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埼玉県在住。主に関東圏の山に登っています。都内や埼玉県内の散歩もします。