在宅避難のすすめ・ローリングストックと湯せん料理

大規模災害時の避難のあり方のひとつに在宅避難があります。
電気、ガスの停止など起きた時を想定すると、何をどれほど備えればいいのか悩むところです。
この記事では食料のローリングストックと軸にした食料の備蓄と、湯せん料理の準備について考えます。
なおこの記事は私自身の準備のため調査した内容をもとに構成しています。
この記事でわかること
- 在宅避難を想定した食事の備え方
- 備蓄する食料の見積もり
- 湯せん調理のメリットと道具
参考資料
書籍『マンション防災の新常識 逃げずに留まる 在宅避難 完全ガイド』を参考に準備をしています。
以下は目次の一部の抜粋です。
今回は03~05を参考に、在宅避難時の食事について検討します。
第3章 自宅で備える 災害時の食料・水・トイレ・連絡方法
01 家庭の防災力 マンションの防災対策に欠かせない自宅の備え
02 家の中でケガをしない対策 在宅避難時の生活空間も確保
03 災害時の食事法 在宅避難時に向けた食事の備えのポイント
04 主食のローリングストック 無駄な備蓄はしない
05 湯せん用ポリ袋とカセットコンロ お勧めの2つの調理ツール
06 お風呂の残り湯も飲料水になる 「携帯浄水器」を使う
07 災害時のトイレ対策 防臭袋と小便の処理がポイント
08 習慣化しておくと役に立つこと 「災害用伝言ダイヤル」を利用する
Information 「ポリ袋調理法」のたくさんのメリット
災害時の食料の備え
書籍の中で在宅避難時の食事のポイントが挙げられています。
- ポリ袋料理で毎日温かい食事をとる
- 主食のローリングストックを行う
- 災害時しか食べない食料は備蓄しない
- 備蓄日数は10日以上を目指す
ポリ袋料理で毎日温かい食事をとる
災害時でも「温かい食事」は心身の健康を保つうえで非常に重要です。ポリ袋調理(湯せんによる調理法)は、
- ガス・水の節約ができる
- 洗い物がほとんど出ない
- 同時に複数品作れる
というメリットがあります。特に在宅避難では電気やガスが使えない可能性があるため、省エネかつ安全に温かい食事をとる方法として適しています。
主食のローリングストックを行う
ローリングストックとは、普段の食事で消費しながら備蓄を循環させる方法です。特に主食(米、麺、パン類)は日常的に消費するため、
- 非常時にも食べ慣れたものを食べられる
- 賞味期限切れを防げる
- 災害時にストレスを軽減できる
といった効果があります。特に在宅避難では「自宅にあるものでなんとかする」必要があるため、継続的な主食の備えが不可欠です。
災害時しか食べない食料は備蓄しない
非常食として「日常では食べないけど長期保存できるもの」を備蓄しても、以下の問題が起きがちです。
- 食べ慣れておらず、災害時に口に合わない
- 消費せずに期限切れになり、無駄になる
- 子どもや高齢者には食べにくいこともある
日常的に食べているものを備蓄すれば、心理的・身体的な負担を軽減でき、ローリングストックにも適しています。
備蓄日数は10日以上を目指す
政府の推奨では最低3日分の備蓄が推奨されています。近年の大規模災害では「支援が届くまでに1週間以上かかる」事例も多く見られます。特に在宅避難の場合は、
- 物流やライフラインの停止が長引く可能性がある
- 家にいながら自給自足的な生活を強いられる
ため、最低10日分の備えが安心です。加えて、家族構成や体調によって必要な量も異なるため、余裕を持った備蓄が望まれます。
食料はどの程度用意する?
主食の基本的な見積もり
非常時の食事はどれぐらい備えればよいでしょうか?
乳幼児や特別なケアが必要な場合は別に考えるとして、通常の食事がとれるケースを考えます。
以下は非常時の基本的な主食の食事の見積もりです。
1人1日分
朝食 ホットケーキミックス粉(50g)
昼食 パスタ(100g)
夕食 ご飯(米100g)
飲み物 野菜ジュース(1本)
必要量=1人分×10日間×家族分
いつも使う主食を利用することで、普段とあまり変わらない食事ができます。
また古いものから使うことで、消費期限切れすることなく備蓄し、利用することができます。
なお水は1人1日当たり飲料水1.5L、調理・衛生用1.5L必要とされています。
ここでは主食の見積もりということで別の機会に検討する予定です。
栄養は?
この分量は栄養的にはどうでしょうか?
栄養を分析するのは面倒ではが、最近は生成AIで簡単に見積もりができます。
以下に回答を示します。
生成AIへの入力例
栄養を分析してください。
- 成人男性を想定し栄養はどうかを評価
- 栄養バランスを評価
- 非常食とした場合、追加したほうが良いものを提案
食品
- 白米 100g(炊飯前)
- ホットケーキミックス 50g
- パスタ 100g(調理前)
- 野菜ジュース 200ml
栄養素一覧(合計)
以下のように合計と充足量が出力されました。(評価欄は後から記載しました)
非常時とはいえ、心もとない感じですね。
栄養素 | 合計量(目安) | 成人男性の推奨量(1日) | 充足率 | 評価 |
---|---|---|---|---|
エネルギー | 約 940 kcal | 約 2,200 kcal | 約 43% | △ |
たんぱく質 | 約 19 g | 約 60 g | 約 32% | △ |
脂質 | 約 8 g | 約 60 g | 約 13% | × |
炭水化物 | 約 190 g | 約 300 g | 約 63% | ○ |
食物繊維 | 約 3.8 g | 約 21 g | 約 18% | × |
ビタミンA | 約 320 μgRAE(主に野菜J) | 850 μgRAE | 約 38% | △ |
ビタミンC | 約 60 mg(主に野菜J) | 100 mg | 約 60% | ○ |
カルシウム | 約 100 mg(主にJ/ミックス) | 800 mg | 約 13% | × |
鉄 | 約 1.5 mg | 7.5 mg | 約 20% | × |
食塩相当量 | 約 1.2 g(野菜J主体) | ~7.5 g | 少なめ | ◎ |
※推奨量は厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」30~49歳男性を考慮。
※野菜ジュースは一般的な200mlあたり(例えばカゴメ「野菜一日これ一本」)を想定。
栄養バランスの評価
- エネルギー:約43%と、全体的にかなり控えめです(非常時の半日分程度)。
- たんぱく質・脂質:どちらも不足しており、体力維持に不十分。
- ビタミン・ミネラル:野菜ジュース頼みになっているが、カルシウム・鉄などのミネラルは足りない。
- 食物繊維:極めて不足気味で、腸の健康維持に不安。
非常食としての改善提案(追加候補)
以下の食品を加えることでバランスが大幅に改善される。と提案されています。
食品 | 目的 | 備考 |
---|---|---|
魚の缶詰(サバ、ツナなど) | たんぱく質・脂質・鉄の補給 | 保存性◎、缶汁も活用できる |
ナッツ類(30g程度) | 脂質・たんぱく質・食物繊維補給 | 高カロリーで栄養価も高い |
チーズ(プロセス) | カルシウム・脂質 | 保存性のあるタイプ推奨 |
乾燥わかめや切り干し大根 | ミネラル・食物繊維補給 | 少量で栄養価が高く保存性あり |
サプリメント(マルチビタミン) | 微量栄養素の網羅補完 | 野菜ジュースだけでは限界あり |
改善検討
少し改善をかんがえてみましょう。
保存と嗜好品、栄養を考え、提案された品から選んで再分析です。
今の内容に以下の食品を加えた場合の栄養素一覧を生成してください。
出力は前回の形式を踏襲してください。
- 鯖缶 1個
- ミックスナッツ 30g
- 乾燥わかめ 3g
- マルチビタミン 1回分
栄養素一覧(合計)改善後
だいぶ改善しました。(評価欄は後から記載しました)
栄養素 | 合計量(目安) | 成人男性の推奨量(1日) | 充足率 | 評価 |
---|---|---|---|---|
エネルギー | 約 1,450 kcal | 約 2,200 kcal | 約 66% | ○ |
たんぱく質 | 約 42 g | 約 60 g | 約 70% | ◎ |
脂質 | 約 35 g | 約 60 g | 約 58% | ○ |
炭水化物 | 約 195 g | 約 300 g | 約 65% | ○ |
食物繊維 | 約 7.5 g | 約 21 g | 約 36% | △ |
ビタミンA | 約 900 μgRAE | 850 μgRAE | 約 106% | ◎ |
ビタミンC | 約 110 mg | 100 mg | 約 110% | ◎ |
カルシウム | 約 380 mg | 800 mg | 約 48% | △ |
鉄 | 約 4.5 mg | 7.5 mg | 約 60% | ○ |
食塩相当量 | 約 2.5 g | ~7.5 g | 適正範囲内 | ◎ |
※鯖缶:190g(汁含む・味噌や水煮)、ナッツ:アーモンドやクルミ主体、わかめ:乾燥3g=水戻しで約30g相当
※マルチビタミン:一般的なサプリ1錠(A、B群、C、D、Eなど含有)
※推奨量は30~49歳男性(厚労省基準)
保存性の良い魚の缶詰や乾燥わかめは、栄養的にも普段から備蓄し、利用したいものです。
またストレスの多い非常時だからこそ食事でリラックスしたいもの。
ナッツやドライフルーツ、柿の種などのお菓子も保存性が良く、楽しめるものかと思います。
サプリメントも保存性が良く、微量栄養素の補給に大いに役立ちます。
それにしても生成AIのおかげで自分の好みで改善検討できるのがよいですね。
好みの食材で検討をするとよいでしょう。
現実的には冷蔵庫の中のものも使う
例えば電気が使えないとなると、冷蔵庫の中の保存性の低いものを利用することになります。
何食分かは食事の材料にできることでしょう。
そのあとには備えておいた保存性の良いものを消費していくことになります。
乾麺、缶詰、お菓子など。
普段からバランスよく備えておくと、非常時も食事に余裕が持てるでしょう。
湯せん調理
災害時に「湯せん調理(ポリ袋調理・袋ごと温める方法)」がおすすめされるのは、安全性・衛生・効率性の面で非常に優れているからです。
以下のような理由があります。
- 水と燃料を節約できる
- 洗い物がほぼ出ない
- 衛生的に調理できる
- 同時に複数の食事を作れる
- 温かい食事がとれる
- 子どもや高齢者にもやさしい調理法
- 応用範囲が広い
湯せん用ポリ袋
湯せん料理に使用する食材を入れるポリ袋は耐熱性のある食品用ポリ袋(高密度ポリエチレン:HDPE)を使う必要があります。
個人的なおすすめはアイラップ。
耐熱温度は120℃。
耐熱素材で湯せんできます。
湯せん調理後はゴミ袋として利用することも可能。
また少し厚手なので災害時の簡易手袋として利用することも提案されています。
私は普段から低温調理でサラダチキンを作るためにアイラップを愛用しています。
湯せん料理レシピ
実はロングセラーであるアイラップ。
レシピ本も多数あります。
またアイラップにかかわらず湯せん料理のレシピ本も多数あります。
Kindle Unlimited で読み放題になっているものも多いので、
普段使いに活用してみると、いざというときの訓練にもなるかと思われます。
カセットコンロ
東京湾沿岸部で直下地震(たとえば首都直下地震や東京湾北部地震)が発生した場合、
停電の影響範囲と復旧の時間については政府機関や電力会社によって一定の想定が示されています。
大規模災害に発展した悪いケースだと、一部地域では1週間以上停電が継続することが予測されています。
また都市ガスについても一部の地域では2週間〜1か月以上の長期停止が予測されています。
そのような場合、カセットコンロなどの調理器具が役立つことになります。
ところでカセットコンロは持っていますか?
カセットコンロの普及率は50%程度の模様ですが、微減傾向のようです。
調査年 | 普及率 | 出典・補足 |
---|---|---|
2018年 | 約58.8% | 内閣府「防災に関する世論調査」 |
2022年 | 約52.0% | 内閣府「防災に関する世論調査」第47回(令和4年) |
2024年(推定) | 約50%前後 | 継続的に微減傾向とされる |
調査によると都市部の若年層・単身世帯では保有率が低いようです。
オール電化住宅の増加により、備蓄用としても用意していない世帯が増加していることも減少の一因のようです。
災害報道直後には一時的に購入が急増する傾向があります。
ただ実際に災害が起きてしまうと、買えない状況になることは明らかです。
平時のうちに用意しておきましょう。
岩谷製ならばスリム型、小型、アウトドア対応など選択肢があり、普段使いもいいんじゃないでしょうか。
カセットコンロボンベ
調査によると保有するボンベの数が1~2本と備蓄不足の傾向があるようです。
使用期限切れのガスボンベ(一般に約7年)が放置されていることも多いようです。
カセットガス1本で65分~70分使用できます。
湯せん料理は中火・弱火で行うため120分使うことができます。
1回の湯せん調理を40分で行えば、3回の湯せん調理を行うことができるので、1日3食の湯せん料理を行うことができます。
10日であれば10本のボンベがあれば良いことになります。
まとめ
在宅避難において食事の備えは、単なる「備蓄」ではなく、日々の食生活と地続きのものです。
まずは今の備蓄を見直し、足りないものを少しずつ追加していくことから始めましょう。
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